『なかよしの水 タンザニアのおはなし』
大きいから。小さいから。そんなことは理由にならない。
子どもが兄弟姉妹で、おもちゃなどの取り合いをした時、みなさんはどうしていますか。
仲裁に入りますか?
どちらかに「ガマンしなさい!」と言いますか?
今回は、兄弟姉妹の関係や、友達との関係に悩んでいる人に読んで欲しい一冊を紹介します。
『なかよしの水』
日照りが続いて、飲み水が足りなくなった動物たち。
水を求めて、みんなで川へ行きますが、そこにはワニがいました。
「ここはおれさまの川だぞ。水をのませてやってもいいが、かわりにおまえたちのだれかを食わせてくれ。おれさまは、はらぺこなんだ。」
動物たちは話し合い、小さな動物から一匹選ぼうということになります。
それではダメだと主張したノウサギが、いけにえに指名されて・・・
ノウサギの知恵で水が手に入り、みんなが幸せになれるお話です。
水が貴重なタンザニアだからこその昔話。
このお話は、タンザニアの昔話をアレンジして作られたものだそうです。
著者は、タンザニアに産まれ、タンザニアで育った方で、水の貴重なタンザニアだからこそ、「教訓」として伝えられているお話なのでしょう。
今の日本では、水道の蛇口をひねると当たり前のように水が出てきます。
日本は周りを海に囲まれて、山からきれいなわき水が流れてくるので、水が貴重な資源という感覚が持ちにくいかもしれませんね。
そんな日本でも、昔は、田畑へ引く水の取り分などで、村同士が争ったということがあったそうです。
そういった水の取り合いでは、体が大きく力の強い方や、人数の多い方が有利だったという過去があったのでしょう。
しかし、それを反省し、知恵で乗り越える話を昔話として残している事に、人間の人間らしさを感じます。
現代の日本でも、通じるところがある!
この物語、動物たちは誰をいけにえにするか「話し合って」決めているのが面白いポイントです。
話し合いをしても、結局、力の強い大きな動物の主張が通ってしまいそうになるのです。
話し合いをすると、みんなが納得のいく結論が出そうですが、そうでないこともあります。
これは、日本の現代社会においても言えることだと思います。
例えば、小さな子どもの頃は、体の大きな子どもや、走りの速い子ども、力の強い子どもなどが決定権をもつ事が多いです。
また、兄弟ゲンカでは、上の子が決定権をもつ事が多いのではないでしょうか。
そうなると、力の弱い子どもや年下の子ども、自己主張のできない子どもはガマンする事が多くなります。
お互いが納得のいく解決方法!
たくさん思いつける人になってほしい。
では、皆が納得のいく話し合いをするにはどうすればいいのでしょうか。
我が家の場合・・・
冒頭の、兄弟でのおもちゃの取り合いでは、私は子どもに「二人ともが納得できる方法を二人で考えてみたら?」と言うようにしています。
すると長男が率先して案を出します。
たいていは「弟に先に貸してあげるから、〇分たったら貸してね!」
と言って、長男が待っています。
そして、時間が来たら、長男は時間制限なく、思う存分使える。という仕組みにしているようです。
「今、我慢して、後で長く使う」か、「先に使って、制限時間の中で遊ぶ」で、好きな方を選ぶ方法が、今の我が子たちにはピッタリで、納得がいくようなので、本人たちに任せています。
しかし、紹介しましたが、この方法が正しいというのではありません。
どちらもが「先に使いたい!」と言うと、どちらかが納得できないことになるからです。
『納得できる方法』というのは、人によっても、場所によっても違います。
両者の中間を考えたり、協力して一緒に取り組んだり、そこにいる人がみんな納得できるまで、考えられるような思考力を身につけて欲しいものです。
おもちゃなどの取り合いで、話し合いをして決めたとしても、どちらかが納得できていないのであれば、それは力で決めているのと変わらないのではないでしょうか。
ノウサギが最後、動物たちみんなが納得し幸せになる方法を考え出したように、ケンカや言い争い、勝ち負けではなく、どちらもが納得のいく方法を考えつける人になって欲しいと思うのです。
そして、決して力が強いわけではないけれど、体の小さな動物(人)でも「知恵」で、みんなを幸せにできることを知り、どんな人でも大切にする気持ちを育んで欲しいですね。
絵本の内容で、ディベート(話し合い)をしてみましょう!
ぜひ、この絵本を読んで、自分がノウサギなら、自分が大きな動物だったら、それぞれの立場にたって、どんな提案をするかを子どもと一緒に考えてみて欲しいです。
タンザニアにおいては、生きる・死ぬに直結する水の入手。
そんな時に、自分ならどう考えるか。
そして、それを、今の時代に当てはめると、どういう考えを持っていれば、皆が幸せになれるのか。
ぜひ、子どもと考えてみてください。
絵本を通して、子どもと学ぼう!
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